
はじめに
確定申告を行った時の状況です。
- 給与所得で年末調整を行っているが、別途、自宅マンションの一部を会社事務所として貸して収入を得ているため、個人事業主として確定申告を行う。
- 確定申告は専用ソフトを使用。規模が小さいので1人で完了。
個人事業主といっても様々なタイプがあり、その人の状況によって収入や形態は変わります。
ここで紹介する例は自営業として生計を立てているケースではありませんが、あくまでも一個人の例として、確定申告のヒントにして貰えればと思います。
家賃収入について
自宅マンションの一部を会社事務所として貸していることで「家賃」を支払ってもらっていますが、この家賃の決め方については以下のような考えで算出しています。
実際に家賃の受け払いを伴わない自己所有住宅(持家住宅)についても、通常の借家や借間と同様のサービスが生産され消費されるものと仮定して、近隣の賃貸物件の相場で評価した計算上の自宅マンションの家賃を算出して、床面積で按分します。
たとえば、会社事務所として貸している床面積の割合が自宅マンションの床面積全体の40%で、近隣の賃貸物件の相場の月額家賃が15万円であった場合は6万円(15万円×40%=6万円)を会社事務所代の家賃となります。
確定申告とは
1.自分の所得(儲け)を申告する
確定申告とは、個人や法人が適正に税金を納めるための制度です。
サラリーマンの場合、会社が給与から天引きして税金を納めているので、確定申告を行う必要はありませんが、個人事業主は自分で自らの所得を計算して、納めるべき所得税の税額といっしょに申告する必要があります。
「所得」とは経費を差し引いた残りの利益
事業によって得られた「収入金額」(売上)からその収入を得るためにかかった「必要経費」(費用)を差し引いた利益を「所得」といいます。
所得 = 収入金額 - 必要経費
例えば、700万円の売上に対して、必要経費が200万円かかったとすると残った500万円が所得になります。
2.個人事業主が申告する税金の種類
確定申告で個人事業主が税務署に申告する主な税金は「所得税」、「消費税」および「復興特別所得税」の3種類です。
所得税は所得に対してかかる税金です。
消費税はお客様から預かる税金で、原則として2年前の売上が1,000万円を超える個人事業主に支払義務が生じます。
そして復興特別所得税は東日本大震災からの復興に使われる税金です。
この他も個人事業主が納める税金としては、「個人住民税」、「個人事業税」および「国民健康保険税」などがありますが、これらは所得税の申告をすれば、都道府県や市区町村から納付額が通知されてきます。
青色申告と白色申告の違い
1.確定申告の方法
個人事業主の確定申告には、3種類の方法があります。
申告方法 | 控除額 | 備考 |
---|---|---|
青色申告 | 65万円控除 | 複式簿記の帳簿作成が必要 |
10万円控除 | 一定規模以下の不動産所得の場合に該当 | |
白色申告 | 特別控除なし |
2.青色申告と白色申告の主な違い
青色申告 | 白色申告 | |
---|---|---|
帳簿付け | 必要(複式簿記) | 必要(簡易簿記) |
決算書の種類 | 青色申告決算書 | 収支内訳書 |
税制上の優遇措置 | あり | なし |
承認手続 | あり | なし |
白色申告でも帳簿付けが義務化され、これまでよりも手間が増えたが、青色申告のような税制上の優遇措置はありません。
確定申告する対象者
1.所得が出ている人は確定申告する
個人事業主の確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間の所得と所得税額を申告する制度のことです。
1年間の所得が赤字だった場合は、還付金を受け取ったり、「純損失の繰越控除」などの適用を受けるためにも、所得税の確定申告をする必要があります。
また、確定申告をしてないと国民健康保険税の減免や非課税証明などが受けられないことがあります。
1年間の所得>所得控除
所得控除とは
納税者の個人的な事情に配慮して、所得から控除される金額です。
個人的な事情とは、家族を養っていることや生命保険に入っていることなどです。
例えば、所得額が同じでも、扶養親族がいる場合と、一人暮しの場合では生活にかかるお金が違います。
そのため、扶養親族がいる人は扶養控除を受けることができます。
「基礎控除」はすべての納税者が受けられる控除で38万円となります。
所得控除の例
- 基礎控除 38万円
- 扶養控除 38万円~63万円
- 医療費控除(原則10万円以上の医療費を支払った人)
2.個人事業主の所得区分
所得は下表のように全部で10種類あります。
このうち「事業所得」「不動産所得」「山林所得」の3種類のいずれかを得ている個人事業主は、青色申告ができます。
また、青色申告の特典である「65万円控除」を受けることができるのは、事情所得がある人か「事業的規模」と認められる不動産所得のある人に限られます。
事業所得の課税方法は「総合課税」といい、他の所得と損益通算して所得税額を計算します。
本業以外の所得があった人は、全ての所得を合計してから所得税額を計算することになります。
所得区分 | 主な内容と所得の計算方法 | ||
---|---|---|---|
1 | 利子所得 | 預貯金や公社債の利子などによる収入 | |
計算方法 | 収入金額 - 所得金額 (通常は源泉徴収で納税が終わるので申告の必要なし) |
||
2 | 配当所得 | 株の配当金や投資信託の分配金などによる収入 | |
計算方法 | 収入金額 - 元本を取得するために要した借入金の利子 | ||
3 | 不動産所得 | マンションやアパート、貸地、駐車場などの賃料による収入 | |
計算方法 | 総収入金額 - 必要経費 | ||
4 | 事業所得 | 小売業、サービス業、農業、デザイナーなど事業による収入 | |
計算方法 | 総収入金額 - 必要経費 | ||
5 | 給与所得 | サラリーマンが勤務先から受け取る給与や賞与 | |
計算方法 | 収入金額 - 給与所得控除額 | ||
6 | 退職所得 | サラリーマンの退職金など退職に係る収入 | |
計算方法 | (収入金額 - 退職所得控除額)×1/2 | ||
7 | 山林所得 | 山林を伐採したり、立木のままで譲渡することによる収入 | |
計算方法 | 総収入金額 - 必要経費 - 特別控除額(最大50万円) | ||
8 | 譲渡所得 | 土地、建物、ゴルフ会員権などの譲渡による収入 | |
計算方法 | 総収入金額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額 | ||
9 | 一時所得 | 競馬や公営ギャンブルの払戻金や生命保険の一時金など | |
計算方法 | 総収入金額 - その収入を得るために支出した金額 - 特別控除額(最大50万円) | ||
10 | 雑所得 | 上記1~9に当てはまらない所得。年金や作家以外の人の原稿料など | |
計算方法 | (公的年金等の収入金額 - 公的年金等控除額)+(公的年金等以外の総収入額 - 必要経費) |
所得の損益通算とは
所得の種類が複数ある場合は、すべての所得を合算してその年の所得として扱います。
このときに事業所得や不動産所得など一定の所得の赤字は他の黒字と相殺することができます。
これを「損益通算」といいます。
例えば、事業所得が300万円の黒字、不動産所得が100万円の赤字、雑所得が20万円の黒字であったとすると、その年の所得はトータルで220万円となります。
事業所得(300万円)+不動産所得(-100万円)+雑所得(20万円)=損益通算後の所得(220万円)

青色申告するために必要なこと
所得を適正に計算するために守るべきルールがあります。
1.収入と経費だけでなくお金の動きも記帳が必要
白色申告の記帳では、収入や経費について、「いつ・どこへ・いくら」なのかが記載された所得の計算ができれば問題ありません。
しかし、青色申告の記帳では、その取引を行った結果、現金や預金などがどのように増減したのか、お金の動きまで記帳し、残高を把握する必要があります。
2.65万円控除を受けるには貸借対照表が必要
65万円控除を受けるには、複式簿記による帳簿づけと、それに基づいた「損益計算書」(所得の計算を行うもの)、「貸借対照表」(年末時点の事業用資産を表す)の作成が必要になります。
65万円控除 | 10万円控除 | |
---|---|---|
帳簿付け | 複式簿記 | 簡易簿記 |
決算書の種類 | 貸借対照表が必要 | 貸借対照表は不要 |
申告期限 | 期限後申告も可能 | 期限内申告厳守 |
3.帳簿や領収書の保存期間
帳簿や領収書は、法律で一定期間の保存が義務付けられています。帳簿、決算書、通帳、請求書及び領収書などは7年間、その他の見積書や納品書は5年間です。
帳簿 | 7年 |
決算関係書類 | 7年 |
領収書や通帳など | 7年 |
その他の書類 | 5年 |
領収書がない場合の対応
必要経費を計上するには領収書が必要になりますが、電車やバスの交通費など領収書が出ない経費があります。
このような場合は「出金伝票」を作成します。
日付、支払先、金額、支払内容を具体的に記入しておきます。
出金伝票にする経費
- 領収書を無くしたとき
- 電車代、バス代などの交通費
- 打ち合わせの際、自動販売機で購入したコーヒー・お茶代
- 接待交際費の割り勘分
- 結婚祝いや香典などの慶弔費 など
4.青色申告の年間スケジュール
おおまかなスケジュールは以下のようになります。
実際の確定申告の作業は年明けから始めることになりますが、帳簿を付けたり領収書を保管したり、普段からできることはコツコツと積み重ねておきましょう。
今年 | 1月 | 取引帳簿の作成(取引データの入力)必要経費となる領収書などを保管 | |
2月 | |||
3月 | |||
4月 | |||
5月 | |||
6月 | |||
7月 | |||
8月 | |||
9月 | |||
10月 | |||
11月 | 保険料控除証明書や社会保険料の控除証明書が届く | ||
12月 | 売掛金を確認、減価償却費の計上、棚卸など | ||
翌年 | 1月 | 確定申告 | 取引先から支払調書が届く |
2月 | 2月16日から確定申告の受付開始 | ||
3月 | 3月15日までが確定申告の提出期限 |
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確定申告には青色申告と白色申告の2種類があり、期限までに書類を作成し納税をすることが重要になります。
書類の作成には、手書きのほか、国税庁の「確定申告等作成コーナー」や会計ソフトで作成する方法がありますが、「確定申告書の作成は難しいのでは?」と苦手意識をお持ちの方も少なくありません。
そこでオススメしたいのは、確定申告ソフトfreeeの活用です。
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また、アプリを使うとスマホからでもかんたんに確定申告に向けた作業が可能です。
確定申告ソフトfreeeを使うとどれくらいおトクになるのか?
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