人は毎日の疲れを食事からの栄養補給や眠ることによって回復させていますが、十分に睡眠が取れなければ、日中眠気に悩まされたり、イライラしてしまったりと思うように生活ができなくなってしまいます。
眠れない原因は人によって様々ですが、しっかりと休息をする、もしくは休息の質を高めることはとても大切です。
しっかりと休息するには生活習慣、食生活といった基本を見直して、それに合わせた対策を行うことが基本で、とても重要です。
最新の調査では成人の5人に1人が睡眠の質に満足できていないことがわかっており、不眠症は他人事ではない病気といえます。
しかし、ひとえに不眠症といっても様々な症状や原因があり、それぞれに合った治療を行わなければ改善していくことはできません。
不眠症とは何か
不眠症”という名前からして病名のように感じますが、実は不眠症という病気はありません。
不眠症というのは、症状のことを指します。
以下のような症状があれば不眠症である可能性があります。
寝つきが悪い(入眠困難)、眠りを維持できない(中途覚醒)、朝早く目が覚める(早期覚醒)、眠りが浅く十分眠った感じがしない(熟眠障害)などの症状が続き、よく眠れないため日中の眠気、注意力の散漫、疲れや種々の体調不良が起こる状態を指します。
不眠症は、小児期や青年期にはまれですが、20~30歳代に始まり加齢とともに増加し、中年、老年と急激に増加します。
また、男性よりも女性に多いといわれています。
1.不眠症と睡眠障害の違い
睡眠障害とは睡眠に関する障害を全て一括りとした名称であり、不眠症もその中に含まれます。
「眠れない」と困っている人は、睡眠障害には違いないですが、不眠症かどうかは分からないということです。
睡眠障害は不眠症以外にも多くの病気や症状が含まれます。
睡眠障害 | 不眠症 | 入眠困難、中途覚醒、早期覚醒、熟眠障害 |
睡眠関連呼吸障害 | 睡眠時無呼吸症候群など | |
過眠症 | ナルコレプシーなど | |
概日リズム睡眠障害 | 時差ボケ、夜勤勤務による睡眠障害など | |
睡眠時随伴症 | 夢遊病など | |
睡眠関連運動障害 | むずむず脚症候群 |
2.不眠症の診断基準
不眠症を判断する基準には、「睡眠障害国際分類(ICSD)」という不眠症を分類する基準があります。
この基準以外にも、統計的調査によるマニュアル「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)」があります。
(1)睡眠障害国際分類(ICSD)
アメリカ睡眠医学会が中心となり、その他の国々と共に策定した睡眠障害の分類です。
一次的な診断基準として用いられている場合が多いようです。
不眠症の症状が続く期間や、眠れないことによって日中起きている間に起こる不調の回数などで、不眠症の分類を判断します。
(2)精神障害の診断と統計マニュアル(DSM)
アメリカ精神医学会により出版された書籍です。
具体的な診断基準が設けられており、アメリカでは病院やクリニックなどでもDSMの診断が基準にされています。
不眠症の原因として、以下の3つに大別されています。
- 「処方されている薬や摂取しているもの」が原因となって起こる睡眠障害
- 「他に原因が特定できるもの」が原因となって起こる睡眠障害
- 「原因不明な不眠症」が原因となって起こる睡眠障害
(3)チェックリスト
興味のある人は実際にチェックしてみましょう。
このチェックは、あくまでも簡易的なチェックです。
細かな症状については、お医者さんに相談し、しっかりと治療を行うことが大切です。
質問A
:以下の4つの質問のうち1つでも該当する方は、質問Bに進んでください。
- 夜眠りにつく時に、目が覚めてしまって寝られないことがある。
- 眠っているのに、途中で起きてしまうことが多々ある。
- 眠っているのに、途中で起きた後眠れないことがある。
- 朝早く起きてしまい、再度眠ることができない。
質問B
- 眠れないことで、普段の仕事で集中できなかったり、困っていることがある。
- 質問Aの症状が、1週間に少なくとも3日はある。
- 質問Aの症状が、少なくとも3ヶ月間は続いている。
【結果解説】
- 質問AとB両方にチェックがある → 不眠症の可能性が高い。
- 質問Aが1つ以上あり、質問Bの7が該当している → 慢性的な不眠症の可能性がある。
- 質問Aにチェックがあり、Bにはない → 一時的な不眠症の可能性がある。
不眠症の症状
不眠といってもすべての人が同じ症状というわけではなく、主に以下の4つのタイプに分けられます。
1.入眠障害
床に入ってもなかなか寝つけないこと状態です。
眠りにつくまでに普段より2時間以上かかってしまう場合を指します。
比較的若い世代に多い症状といわれています。
原因はさまざまなものがあります。
また、眠れずじっと安静にしているため、悩み事や不安なことなどが頭に浮かび、さらに眠りに入りづらくなってしまうこともあります。
2.中途覚醒
寝付くことはできても、夜中に途中で何度も目を覚ましてしまう状態のことを中途覚醒といいます。
夜中にトイレに行くために起きてしまうということは誰でもありますが、中途覚醒の場合、その後眠りにつくことができないことも多くあります。
中高年の不眠症やうつ病による不眠の場合に起こりやすい症状です。
3.早期覚醒
本人が望む起床時刻より2時間以上早く目覚めてしまうことです。
一般的に年をとると、体内時計のリズムが前にズレやすく、夜早くに寝て、早朝に目覚めるようになります。
このため早朝覚醒は、高齢者によくみられます。
また、うつ病が原因になることもあります。
4.熟眠障害
睡眠時間は十分とっているものの、ぐっすり眠ったという熟睡感が得られない状態のことを熟眠障害といいます。
熟睡障害には、「睡眠時無呼吸症候群」「周期性四肢運動障害」など、眠りに関するほかの病気が関係していることがありますが、こうした病気は、自分ではなかなか気づけないのが厄介です。
比較的深い眠りであるノンレム睡眠の量が少なく、脳が十分に休まっていないことが原因であると考えられています。
不眠症の原因
これらの不眠の症状が引き起こされる原因は、大きく分けると以下の5つに分類することができます。
1.身体的要因(physical)
(例)痛み、かゆみ、咳、喘息、アレルギーなど
抱えている病気の症状によって引き起こされるケースを「身体的疾患による不眠」といいます。
具体的には胃潰瘍や逆流性食道炎などによる痛みや嘔吐感、狭心症や心不全など心臓疾患の発作、アレルギーによる咳や喉の痛み、皮膚疾患による肌に痛みや痒み、などが挙げられます。
「身体的疾患による不眠」に関しては原因となっている病気を治療することが改善策になります。
2.生理学的要因(physiological)
(例)不規則勤務で、寝る時刻と起きる時刻が日によってバラバラになるなど
たとえば、旅行先など枕や布団が変わったことでいつも通り眠れなくなるなど、ちょっとした環境の変化によって睡眠の質は変わってきます。
就寝する時間や寝室の光量、周囲の騒音、室内の温度などの睡眠環境が原因であれば「生理学的不眠」といいます。
3.心理的要因(psychological)
(例)失敗が許されない会議や交渉事を翌日に控えている、失恋や人間関係のストレスなど
患者の多くはこの「心理学的不眠」が原因といわれています。
職場や家庭などの人間関係、仕事や勉強、家事などに対する精神的負担がストレスとなり、脳を興奮状態にすることでも引き起こします。
このような精神的な負担はうつ病の原因にもなるため、ストレスや不安の解消をすることが重要になります。
4.精神医学的要因(psychiatric)
(例)うつ病など
うつ病や統合失調症などの精神疾患の症状によって引き起こされるケースを「精神疾患による不眠」といいます。
うつ病患者の約9割は眠れない、眠りが浅いなどの睡眠障害が現れています。
不眠と精神疾患の両方を発症している場合の大半は精神疾患が原因といわれています。
逆に眠れなくなることでストレスが溜まり精神疾患を発症するケースもあります。
両方の症状が現れた場合は先に精神疾患を治療することが重要になります。
5.薬理学的要因(pharmacological)
(例)薬、アルコール(お酒)、カフェイン(コーヒーや紅茶)、ニコチン(タバコ)など
コーヒーに含まれるカフェインやタバコに含まれるニコチンには睡眠を妨げる覚醒作用があります。
仕事や勉強中の眠気覚ましにコーヒーを飲むことが多くありますが、睡眠前であれば逆効果となるので就寝前の摂取には注意が必要です。
寝付きが良くなるという理由から就寝前にお酒を飲まれる方は多くいますが、これも逆効果です。
一時的に眠たくなるもののアルコールを分解するために身体は活動を続けるため、夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」の原因になる可能性があります。
このように特定の物質が原因の場合は「薬学的不眠」といいます。
不眠症はどの診療科で受診すればよいか
睡眠障害の種類や原因によって受診する科が異なるため、実際に病院探しに苦労している人も多いようです。
睡眠について悩んでいる人は、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。
もし専門でなかったとしても、専門病院を紹介してもらうことができます。
また、睡眠障害を専門とした「睡眠外来」を標榜している専門医を探してみるのもよいでしょう。
しかしながら、睡眠の専門医は数も多くないため、どうしても近くに見当たらない場合は、総合内科や心療内科・精神科などで相談してみてください。
※どこの病院に行くべきなのかがわからないという人は、日本睡眠学会が睡眠医療認定医をリストアップしていますので確認してみてください。
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