自己都合退職と会社都合退職では失業保険の給付金の金額が、150万円以上変わってくる場合があります。
転職する際に職業欄に記載する「自己都合退職」と「会社都合退職」。
一見、なんら変わりのないことだと思っていた人も多いことでしょう。
しかし、自己都合退職と会社都合退職には雲泥の差があるのです。
ちょっとしたことで給付金の金額が変わるので退職手続きには十分注意しましょう。
自己都合退職と会社都合退職の違い
失業保険は、やむを得ず失業状態になった人の生活支援という目的があることから、退職した理由により給付方法を区別しています。
退職理由は大きく分けて2種類あります。
自分で決断して退職する「自己都合退職」と会社側の都合で退職せざるを得ない「会社都合退職」です。
失業保険を受給するときは、この退職理由によって受給できる日数が変わるので注意が必要です。
1.自己都合退職になる場合
従業員自ら退職届けを提出して辞めた場合は、自己都合退職となります。
履歴書には「一身上の都合により退職」と記載します。
2.会社都合退職になる場合
会社都合退職とは、従業員の意思とは関係なく、会社の倒産、人員削減、退職勧奨などで解雇・退職した場合のことをいいます。
履歴書には「会社都合により退職」と記載します。
3.自己都合退職のメリット・デメリット
(1)メリット
- 履歴書には「一身上の都合により退職」と記載し、経歴に傷がつかない
(2)デメリット
- 失業保険の給付金の支給を受けるまで3カ月の支給制限期間がある
- 勤務期間に応じて、退職金の支給額が減額される
4.会社都合退職のメリット・デメリット
(1)メリット
- 失業保険の給付金を約1ヶ月で受けることが出来る
- 失業保険の給付金で貰える総額が1.5~2倍に増える(150万円変わるケースがある)
- 退職金が満額支給される
- 早期退職制度の場合は、再就職支援(後述)や退職手当金が支給されるケースがある
(2)デメリット
- 履歴書には「会社都合により退職」と書く必要があり、リストラされたイメージで経歴に傷がつく
自己都合退職の場合の給付日数
自己都合退職とは、労働者からの申し出によって労働契約を解除することをいいます。
退職届に「一身上の都合により」と書くケースがこれにあたります。
自己都合退職の場合の給付日数は、年齢などに関わらず、在職中における雇用保険の加入期間によって決定します。
年齢 | 加入期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
全年齢 | - | 90日 | 120日 | 150日 |
なお、自己都合退職の場合は待機期間が終了した後も、3ヶ月間の給付制限が設けられますので、その間は給付金を受け取ることができません。
会社都合退職した場合の給付日数
会社都合退職とは、倒産・解雇など、会社側の都合により労働契約を解除させられることをいいます。
会社都合退職の場合は、労働者の意思に反して、突然離職せざるを得ないという観点から、自己都合に比べ多めの給付日数となっています。
年齢 | 加入期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30歳以上 35歳未満 |
120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上 45歳未満 |
150日 | 240日 | 270日 | ||
45歳以上 60歳未満 |
180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上 65歳未満 |
150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
なお、会社都合退職して失業保険の受給資格を得た方のことを、「特定受給資格者」といいます。
特定受給資格者になると、3ヶ月の給付制限も撤廃されます。
1.特定受給資格者とは
会社都合により退職を余儀なくされた方については、失業保険の給付日数が多めに付与されるようになっており、この要件に該当する方のことを「特定受給資格者」といいます。
2.会社都合退職とは
会社都合退職とは、会社の一方的な都合により退職を余儀なくされることをいいますが、具体的には以下のいずれかに該当する必要があります。
- 会社が倒産(破産、民事再生、会社更生法などの手続き)した
- 会社の事業縮小にともない大量の離職者(1ヶ月で30名以上、または労働者の1/3以上)が発生した
- 事業所の廃止
- 事業所の移転により通勤が困難になった
- 自分に非のない解雇
- 労働契約が実際の内容と大きく異なっている
- 賃金の未払い(2ヶ月連続して賃金の1/3を超える金額が支払われない)
- 賃金が85%未満に低下した(することになった)
- 退職前3ヶ月間に月45時間を超える残業をしていた
- 職種を変更され、かつ自分の職業生活に対し会社からの配慮が全くない
- 雇用契約書に契約期間の更新が明示されているのに更新されなかった
- 上司や同僚からパワハラ・セクハラを受けている
- 事業主から直接・間接的に退職の推奨を受けた
- 会社の都合による休業が引き続き3ヶ月以上となった
- 会社が各種法令に違反している
特定受給資格者と特定理由離職者
特定受給資格者は会社都合退職し、失業保険の受給資格を得た方のことをいいますが、似たような言葉で「特定理由離職者」というものがあります。
自己都合で会社を辞めたが、そうせざるを得なかった正当な理由がある場合は「特定理由離職者」とみなされ、3ヶ月の給付制限を受けることなく失業保険を受給できることがあります。
1.特定理由離職者の認定条件
特定理由離職者として認定されるためには、離職以前の雇用保険の加入期間が6ヶ月以上あり、さらに、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 有期の雇用契約が満了し、更新されなかった
- 体力不足・心身障害などにより業務遂行が困難になった
- 妊娠・出産などで退職し、かつ受給期間延長措置を受けた方
- 父・母の扶養介護が必要になったなど、家庭事情が急変した
- 単身赴任者などで、今後家族との別居生活を継続することが困難になった
- 結婚などで住所が変更になり、会社への通勤が困難になった
- 会社の人員整理などで、希望退職の募集に応じた
【※1】ⅰ~ⅶに該当する場合は、離職以前2年間に雇用保険に加入していた期間が6ヶ月以上1年未満の方についてのみ、手厚い給付日数(特定受給資格者と同等)となります。
2.特定理由離職者としての認定方法
初めに退職後に届く、離職票-2の離職理由欄を確認します。
4番目の項目「労働者の判断によるもの」のいずれかにチェックが入っていると思いますが、最後「(2)労働者の個人的な事情による退職」にチェックが入っている場合は、特に離職者からの申し出がない限り、ハローワークは「自己都合退職」として処理します。
もし、特定理由離職者の条件を満たしているのであれば、ハローワークでの初回手続きの際に、必ず正確な退職理由を担当者に伝えて下さい。
それが認められれば、失業保険の給付日数は大幅に増えますし、3ヶ月間の給付制限はなくなります。ただし、【※1】の条件には注意が必要です。
なお、特定理由離職者は、平成21年3月31日~平成29年3月31日に退職された方のみを対象としておりますので注意してください。
失業手当が受け取れる条件と申請
失業保険の給付金は、退職した人が誰でも受け取れる訳ではありませんし、自動的に受け取れるものでもありません。
条件を満たしていることと申請が必要となります。
1.本人に働く意思と能力がある
失業保険の給付金は、退職から次の就職までの生活の保障が目的ですので、本人が働けなかったり、働く気がないと給付されません。
たとえば、大きな怪我や妊娠中などは、失業手当ではなく、別の手当が受けられます。
2.積極的に求職活動を行っている
失業保険の給付金を受けるにあたり、積極的に求職活動を行っていなければなりません。
「もう就職先が決まっていて、しばらく期間がある」や「収入が無いけど起業の準備をしている」「実家に戻り、家事に専念している」ような場合は認められません。
3.過去2年間で合計12ヶ月以上の雇用保険の被保険者期間がある(会社都合は6ヶ月)
失業保険の給付金は、過去の雇用保険の加入により支払われます。
過去2年間で12ヶ月(会社都合の場合は6ヶ月)以上加入していなければ、認められません。
自己都合退職と会社都合退職で条件が異なるので注意が必要です。
4.申請はハローワークへ
失業保険の給付金を受けるにはハローワークへの申請が必要になります。
必要書類等は以下のようになります。
・離職票2種類(前職で貰えます)
・雇用保険被保険者証(退職時に貰います)
・印鑑
・写真(縦3cm×横2.4cm)
・普通預金通帳(本人名義、一部のハローワークはキャッシュカードでも可)
・本人確認証(写真付き)
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